住まいを根本から作り変える「スケルトンリフォーム」。理想の間取りを実現できる反面、「費用はいくらかかるのか?」と不安な方も多いでしょう。大規模な工事ゆえに高額になりがちですが、相場や内訳を事前に知れば、適切な予算計画が可能です。
1. スケルトンリフォームとは?費用対効果を考える前に


まず、スケルトンリフォームがどのようなものか、その定義と特徴を正確に理解しておくことが重要です。
1-1. スケルトンリフォームの定義:骨組みだけ残す大改装
スケルトンリフォームとは、その名の通り、建物の「スケルトン(骨格・骨組み)」、つまり柱・梁・床・壁などの構造躯体だけを残し、内装や設備、間仕切り壁などをすべて解体・撤去して、ゼロから空間を作り直すリフォーム手法です。
中古物件を購入して自分好みに全面的に作り変えたい場合や、築年数が経過した自宅の老朽化した配管・配線まで一新したい場合に選ばれます。
1-2. リノベーションやフルリフォームとの違いは?
「リフォーム」は修繕、「リノベーション」は新たな価値の付加を指します。スケルトンリフォームは、内装をすべて解体するため、「フルリフォーム」や「フルリノベーション」の最も大掛かりな手法の一つと位置づけられます。
1-3. スケルトンリフォームの主なメリット
- 間取りの自由度が非常に高い。
- 老朽化した配管・配線を一新でき、漏水などのリスクを根本から解消できる。
- 内装デザインに統一感を出せる。
- 断熱・防音・耐震(戸建て)など、住宅性能の向上も同時に行いやすい。
1-4. デメリットと注意点も確認
- 構造(例:マンションの壁式構造)により、希望の間取りにできない場合がある。
- 工事期間中(1.5ヶ月~3ヶ月程度)は仮住まいが必須。
- 解体時に大きな騒音が発生し、近隣への配慮が不可欠。
- 工期が長く、打ち合わせも含めると半年以上かかることも。
2. 【タイプ別】スケルトンリフォームの費用相場
最も気になる費用相場を、マンションと戸建てに分けて見ていきましょう。ただし、費用は物件の状態、工事内容、使用する設備のグレードによって大きく変動します。
2-1. マンションの費用相場(総額・㎡単価)
マンションの場合、専有部分(室内)のみが対象です。費用相場は、総額で約650万~1,450万円、1㎡あたりの単価で約12.5万~15万円が目安とされています。
デザインや素材にこだわると㎡単価20万円以上になるケースも珍しくありません。
2-2. マンションの広さ別(㎡別)費用目安
広さ別の費用相場目安は以下の通りです。
※上記はあくまで目安です。設備のグレードや内装の仕様によって変動します。
2-3. 一戸建ての費用相場(総額)
戸建て(内装のみ)の広さ別費用相場目安は以下の通りです。
※上記は外壁・設計費などを含まない目安であり、建物の状態や工事内容で大きく変動します。
一戸建ての場合、施工面積が大きくなる傾向があり、内装に加えて外壁・屋根・耐震補強など工事範囲が広がる可能性もあるため、費用は高額になりがちです。
相場は総額で約450万~2,500万円と幅が広いです。
2-4. 一戸建ての費用目安(坪単価・工事範囲)
坪単価(1坪=約3.3㎡)では約10万~50万円が目安ですが、工事内容や建物の劣化状況によっては坪単価80万円近くなることもあります。
内装のみのスケルトンリフォームであれば600万~1,100万円程度に収まるケースも多いですが、外装や耐震・断熱工事も含むと2,000万円を超えることも珍しくありません。
3. 費用の詳細は?詳しい内訳と価格変動の要因


スケルトンリフォームの費用は、何にどれくらいかかっているのでしょうか。高額になりやすい項目と、価格を左右する要因を知っておきましょう。
3-1. 費用の大部分を占める項目(解体・下地・配管)
以下の費用が大きくかかります。
- 解体・撤去・下地工事費: 内装をすべて解体し、壁・床・天井の骨組みや下地材(石膏ボードなど)を新た作る費用。
- 設備配管・電気配線工事費: 給排水管、ガス管、電気配線をすべて引き直す費用です。間取り変更に伴い水回りの位置を動かすと、費用はさらに上がります。
3-2. 設備(キッチン、バス、トイレ)のグレード
水回り設備のグレードは、費用に直結します。システムキッチン、ユニットバス、トイレなどをすべてハイグレード品で揃えると、数百万円単位で費用が上昇します。
3-3. 内装材(床、壁、天井)の選び方
内装材も価格を左右します。一般的なビニールクロスや合板フローリングは比較的安価ですが、無垢材フローリング、タイル、塗り壁(珪藻土など)を選ぶと高くなります。
3-4. 間取り変更やデザインへのこだわり
壁を新設・撤去する範囲が広いほど、解体費や下地工事費がかかります。また、造作家具(オーダーメイドの棚やカウンター)や間接照明など、デザインにこだわるほど費用は上昇します。設計デザイン費も別途考慮が必要です。
4. 賢く費用を抑えるコツと注意点
高額になりがちなスケルトンリフォームですが、ポイントを押さえれば賢く費用を抑えることも可能です。合わせて、計画時の注意点も解説します。
4-1. 依頼先の選び方:地元の優良工務店 vs 大手
リフォーム費用は、依頼する業者によっても変わります。
大手リフォーム会社は安心感がありますが、広告宣伝費などが上乗せされ高めになる傾向があります。地元の優良工務店は費用を抑えられる可能性がありますが、実績やデザイン力の見極めが重要です。
複数の業者から相見積もりを取り、提案内容と費用を比較検討することが不可欠です。
4-2. 設備や内装材にメリハリをつける
すべてをハイグレードにするのではなく、「こだわりたい部分」と「コストを抑える部分」にメリハリをつけることが重要です。
例えば「キッチンはハイグレードにしたいから、お風呂やトイレはミドルグレードにする」など。メーカーの既製品(システムキッチンやユニットバス)もうまく活用しましょう。
4-3. 補助金・減税制度の活用
スケルトンリフォームに伴い、省エネ(断熱改修、高効率給湯器の設置など)やバリアフリー(手すり設置、段差解消など)工事を行う場合、国や自治体の補助金・助成金を利用できる可能性があります。
また、リフォーム促進税制(所得税の控除や固定資産税の減額措置)の対象になるかも確認しましょう。
4-4. 費用計画とローンの注意点
ローンは金利の低い「住宅ローン」が有利です。特に中古物件購入とリフォームを同時に行う場合、物件費用とリフォーム費用をセットで住宅ローンとして借りるのがおすすめです。
リフォームローンは金利が高め(2~5%程度)ですが、手続きが簡単な場合があります。
4-5. 計画時の重要チェックポイント(追加費用・制限)
スケルトンリフォーム特有の注意点があります。
- 追加費用: 解体して初めて、柱の腐食やシロアリ被害、アスベストの使用が判明し、追加の補修・撤去費用が発生することがあります。予備費として総費用の10%程度を見ておきましょう。
- 構造上の制限: マンションの「壁式構造」では、室内の壁が構造壁(コンクリート)になっていることがあり、その壁は撤去できません。間取りの自由度が制限されます。
- 管理規約: マンションの管理規約で、床材(フローリングの遮音等級など)や水回り設備の移動、工事時間帯などに厳しい制限が設けられている場合があります。必ず事前に確認が必要です。
5. まとめ


スケルトンリフォームの費用は、マンションで約650万~1,450万円、戸建て(内装のみ)で約600万~1,100万円が目安ですが、設備のグレードや工事範囲で大きく変動します。
後悔しないためには、まず「こだわりたい部分」と「コストを抑える部分」の優先順位を明確にすることがポイントです。
信頼できるリフォーム会社を複数比較検討し、管理規約や構造上の制限も確認しながら、ご自身の希望と予算に合った最適なプランを見つけましょう。




