ゼネコンという言葉聞いた事があるでしょうか。ニュースや新聞などで度々目にしますが、「ゼネコンって何なの?そもそも会社なの?」と疑問に思う方も多いと思います。確かにゼネコンと聞いても、「不動産業者」や「アパレルメーカー」などのように、名前を聞けば何をしている会社なのかが分かるワケでありません。
また、ゼネコンという言葉を知っていても、実際にどんな事をしているかまでは知らない方も多いです。そこで今回は、ゼネコンについて詳しく知りたい方に向けて、ゼネコンとは何をする会社か?をテーマに解説します。
1. ゼネコンとはそもそも何か?
ゼネコンとは総合建設業者の事です。要は、マンションやビル、その他の施設を含めて「建物」を建てる会社の総称です。例えば、「大成建設」や「大林組」などが、ゼネコンと呼ばれる企業になります。ゼネコンは、「総合建設業者」と呼ばれていますが、自社で建設の全てを行うワケではありません。自社で全てを行うというよりは、元請業者として施工全体を管理する役割を担います。建築の実務を担当する土木・建築関係の会社を、全てゼネコンがコントロールします。
イメージとしては、ある不動産を建築する時にゼネコンがリーダーとなって、その他の土木関係の会社に指示を出すようなイメージです。そのため「General(総合的・全体的)Contractor(請負業者)」と呼ばれ、略してゼネコンと呼ばれるようになったのです。
ゼネコンの定義
ゼネコンの話をすると良く出てくる疑問が、「総合的とは何か?」「建設会社や工務店などとは何が違うのか?」という、いわゆるゼネコンの「定義」についてです。「ゼネコン」という言葉に対して、明確な定義はありません。ただ、一般的には一つの会社で設計・施工・研究を行っているかと言う点が、ゼネコンか否かを分けます。この設計・施工・研究を自社内で全て行っている会社で、且つ売上が高い会社が「ゼネコン」と呼ばれます。
この設計・施工・研究は、そもそも独立した機能を持つ部門なので、これを併せ持つ会社は基本的には大きな会社(資金力がある)でないと出来ません。また、ゼネコンがこの設計・施工・研究を管理していないとそもそも土木関係の会社を率いてリーダーの役目を負う事が出来ないのです。
施工とは?
施工とは具体的にどんな事をするかと言うと、大きく分けると以下4つの事です。
- 現場の安全管理
- 不動産の建築工程の管理
- 全体の原価管理
- 建物の品質管理
このようにゼネコンは施工時に様々な役割を担います。まずは現場の安全管理の徹底です。下請業者の人達が安全に働けるように、建築現場の通路確保や労働時間の管理などを行います。また、建築工程の管理も大事な仕事です。不動産を建築する時には、土台造りから生コン(コンクリート)の注入、鉄筋の枠組みなど数多くの「段階」があります。その段階はそれぞれスケジュールが決まっていますが、一つの業者ではなく複数の業者が協力して請け負っています。
そのため、それら複数の業者の進捗具合を一括で管理し、建築工程に遅れがないかを確認するのもゼネコンの役割です。ゼネコンにおいて、最も大事且つ最も難しい仕事が、この「建築工程の管理」になります。また、建築途中で計画が変わる事は良くあります。さすがに図面が根本的に変わることは稀ですが、資材の種類や仕様の軽微な変更は良くある事です。また、職人の補充などの人権費の管理もしなければいけません。このように、資材費用や人件費などの建築に関わる全ての原価を管理するのも、ゼネコンの役割なのです。決められた予算内で何とか原価を調整しコントロールします。
最後に「建物の品質管理」についてです。不動産を建築する時には「青図」と呼ばれるような、詳細な図面があります。この図面は非常に細かい個所まで記載してあり、各部材や資材メーカーまで細かく決まっている事が多いです。ゼネコンは、その細かい個所までキチンと設計図通りに進捗しているかを管理します。この品質管理をキチンとしないと、仕様の低い建物になってしまうのです。
研究とは?
「設計」についてはイメージが沸くと思いますし、施工についても前項の説明でイメージが沸いたと思います。ただ、「研究」に関してはピンとこない方も多いと思います。研究とは、例えば「コンクリートの技術研究」などの事を指します。ゼネコンが技術研究をする理由は、コストを抑えて品質の高いモノを作るためです。例えばコンクリートの技術研究で言えば、耐震性や施工の合理化を追求します。仮説を立て実験を重ねる事によって、より丈夫でコストがかからないコンクリートの精製方法を研究しているのです。
一方、工務店と建設会社はこの三つの機能を全て有しておらず、ゼネコンに比べると規模も小さいです。工務店は地域密着型の会社が多く、基本的には一戸建ての建築を専門に請け負っています。設計から施工までは行いますが研究はしません。建設会社も同じく、基本は設計・施工までです。稀に研究を行っている会社もありますが、ゼネコンに比べると研究の規模は小さく、売り上げも小さいです。
2. ゼネコンの実務について
ゼネコンが民間企業から仕事を請け負う時は不動産ディベロッパー(自ら土地を仕込み建築し保有したり売却したりする会社)から依頼される事が多いです。例えば1棟マンションを建築する時の流れを見てみましょう。
- 不動産ディベロッパーがマンションを建築する土地を見つけて、その土地の所有者(もしくは仲介会社)にアプローチする。
- 不動産ディベロッパーがその土地にどのようなマンションを建築できるかの、簡易的な設計図を依頼する。依頼先はゼネコン経由での設計事務所に依頼する事が多い。
- 簡易的な設計図でマンションの「規模」が分かる。マンションの規模が分かれば売上も同時に分かる。その売り上げを見て、ある程度収支が合い検討できそうであれば、ゼネコンに見積もり依頼をする。(ゼネコンが直接不動産ディベロッパーと絡むのはこの時点から)
- ゼネコンは簡易的ではあるが(資材や人件費などが読めないため「簡易的」)見積もりを不動産ディベロッパーに提出。
- 不動産ディベロッパーは売上、建築費、販売経費、利益を計算して、捻出できる「土地代」を算出する。その土地代が所有者の希望に合えば土地を取得する。おおまかですが上記のような流れになります。厳密に言うと、④で見積もりを出した後に不動産ディベロッパーと交渉を重ねる事が多いです。特に土地の取得が本格的になればなるほど細かい部分まで調整していきます。
見積もりを出したものの、実際に着工するのは数か月後(不動産ディベロッパーが土地を取得して建築の申請をするまでに時間がかかるため)です。見積もりから着工まで時間が空いてしまうので、見積もり時点では資材価格も人件費も分かりません。そのため、見積もりを出して着工するまでに見積もり額が変わってしまう事は良くある事です。不動産ディベロッパーにもよりますが、一般的には着工直前で再度正式な見積もり額を出してその金額で契約をします。
しかし、不動産ディベロッパーからしても大きく見積金額がブレてしまうと、収益が圧迫されて(場合によっては赤字になる)しまいます。そのため、少しでも価格を抑えるために、以下のような点をゼネコンと一緒に詰めていきます。
- 外壁タイルの範囲やタイルの品質
- エントランスや共用施設の仕様(床のタイルや天井・壁の材質)
- 外部廊下の仕様(吹き付け部分の範囲や手すりの品質)
- 専有部分も仕様(建具やキッチン・トイレ・浴室の材質など)
このような部分をゼネコンと不動産ディベロッパーで詰めていきます。いずれも建物の耐震や構造上についてではなく、品質についての話が多いです。品質をどれだけ落とすかについての協議をします。
3. ゼネコンが3部門必要な理由
前項の、マンション建築を請け負う流れを見てもらうと分かると思いますが、ゼネコンは不動産ディベロッパーとの窓口になっています。そのため、ただ設計できるだけ、ただ施工できるだけでは不動産ディベロッパーと協議出来ないのです。見積もりを提出する時にはゼネコンの設計部門(もしくは外注している設計事務所)がないと、不動産ディベロッパーの要望に応えられません。仕様や品質の協議をする時には設計部門と実際に施工する経験・ノウハウがないと不動産ディベロッパーに提案が出来ません。
また、設計・施工で得たノウハウを活かし、いかに品質を保ちながらコストを下げるかという研究も行う必要があります。ゼネコンが研究を怠ると、広義では日本の建築技術が発展しませんし、当然ゼネコン業界も発展していかないからです。また、着工後に図面が変わる事も良くあり、むしろ図面が一切変わらない事はまずあり得ません。細かい下がり天井の位置だったり、材質の入れ替えだったり、何度も変わっていくことが多いです。そのため、仮にゼネコンに設計部門・施工部門・研究部門のどれか一つでも欠けていたら、柔軟な対応できずに工期が遅れてしまう場合もあります。
4. ゼネコンと入札について
ゼネコンとセットでてくる言葉と言えば「入札」です。入札とはゼネコンが仕事を請け負う時に金額などを記載した札を入れて、企業が仕事を勝ち取る事です。イメージとしてはオークションで金額を入札して、目当ての品物(ゼネコンの場合は「仕事」)を獲得するようなイメージです。
一般的な入札は「競争入札」と呼ばれる入札方法になります。競争入札は、言葉の響きで何となく分かると思いますが、各社「工事金額」を競って入札する事です。ただし、ゼネコンを選定する基準は「金額」以外にもあります。具体的には「工事概要、工事期間、工事の質」などになるので、事業計画書を簡易的に作成して予め工事の発注主に提出しておきます。その上で工事価格を算出して、金額を記載した札を入札箱に入れるという流れです。
発注した側は全ての企業の入札が終わると、札を確認します。選定基準としては、「最も工事見積額が安い企業」と「工事予定価格に一番近い企業」のいずれか一方の基準でゼネコンを選定します。「安い企業」だけではなく「工事予定価格に近い企業」があるのは、工事の品質を確保するためです。極端に安い金額だと工事の質に問題があるケースもあるので、その点をしっかり見極めた上でゼネコンを選定します(この時に事業計画書が活きてきます)。
ただ、良く耳にする「ゼネコンと入札のブラックな話題」に「談合」という言葉があります。談合自体の意味は「話し合い」なのですが、今回のケースで言う談合は非常にブラックな話し合いという意味の談合です。通常、競争入札する理由は「少しでも工事価格を抑えるため」が目的です。公共事業であれば、税金を使うので尚更工事費用を抑えなくてはいけません。しかし、談合は競争するはずのゼネコンと発注業者が、事前に入札価格と落札価格を決めておくのです。
入札したゼネコンには利益が出るようにして、発注主はそのゼネコンからキックバックを貰うという仕組みです。つまり、私腹を肥やすために税金を無駄遣いしているという事になります。これが、一昔前までニュースで報じられていたゼネコンの「談合」です。勿論、ゼネコンが仕事を獲得するのは入札だけではありません。入札以外に直接不動産ディベロッパーなどから仕事を依頼される場合もあります。
5. ゼネコンランキング
では、実際に日本にはどのようなゼネコンがあるのを見てみましょう。以下は、売上高TOP10の会社です(2016年3月決算ベース)。
- 大林組 1,777,834百万円
- 鹿島建設 1,742,700百万円
- 清水建設 1,664,933百万円
- 大成建設 1,545,889百万円
- 竹中工務店 1,284,362百万円
- 長谷工コーポレーション 787,354百万円
- 戸田建設 492,621百万円
- 五洋建設 491,564百万円
- 前田建設工業 441,723百万円
- 三井住友建設 414,958百万円
このように、上位5社に関しては売上高1兆円を超えるほどの規模の会社です。ゼネコンは売上高によってスーパーゼネコン、大手ゼネコン、中堅ゼネコンと分類されます。
スーパーゼネコンについて
明確な定義があるワケではありませんが、ゼネコンは売上高によって3種類に分かれます。スーパーゼネコンは不動のTOP5を独占している会社です。目安としては単独で売上高が1兆円を超える企業ですが、年によっては1兆円超えない場合もあります。
先ほどの売上高を見てもらうと分かりますが、スーパーゼネコンは「大林組」「鹿島建設」「清水建設」「大成建設」「竹中工務店」の5社になります。この5社は日本では不動のゼネコンとして知られており、現に売上高6位の長谷工コーポレーションと5位の竹中工務店でも5,000億円近い差があります。1位の大林組と長谷工では倍以上の差がある程です。
大手・中堅ゼネコンについて
前項と同様に明確な定義があるワケではありませんが、大手ゼネコンはスーパーゼネコンに準ずる規模のゼネコンです。目安としては売上高3,000億円以上となっております。場合によっては、3,000億円以上を準大手、4,000億円以上を大手と分ける場合もあります。
スーパーゼネコンほどではありませんが、大手・準大手ゼネコンも世間的には有名な大企業として知られています。超高層タワーマンションや複合ビル、商業施設など以外にも大型のダムや発電所、公共事業など色々な不動産を手掛けています。大手ゼネコンと呼ばれる企業は「長谷工コーポレーション」「戸田建設」「西松建設」「五洋建設」「前田建設工業」などの企業です。また、中堅ゼネコンと呼ばれる企業は「熊谷組」「東急建設」「フジタ」「鴻池組」「錢高組」などの企業です。
6. サブコンとは?
一方、ゼネコンと対比して語られる事が多い言葉に「サブコン」という言葉があります。サブコンとはゼネコンの下請けなどとして、実際の土木・建築工事を請け負う建設業者の事を言います。先ほどゼネコンを「リーダー」と称しましたが、サブコンはリーダーであるゼネコンに付いて行く「メンバー」のようなイメージです。
サブコンを深く知れば、ゼネコンがどのような仕事をしているのかが更に理解しやすくなります。サブコンは、設備工事などの特定・専門工事業者もいれば、ゼネコンの施工を手助けするような業者もいます。ゼネコンはサブコンそれぞれに仕事を振り分け、仕事の進捗管理や調整をしなければいけないのです。
サブコンとはどのような役割か?
サブコンは様々な種類があります。いわゆる「とび職」や「大工」と言われる職人を擁する企業であったり、電気設備や空調設備を専門にしている企業であったりです。また、大工と一言で言っても、木造住宅などの新築・改築の大工もいれば、仮枠大工と呼ばれる鉄筋コンクリートや床・壁などを作る大工もいます。また、とび職は、工事現場の足場を作る職人もいれば、ビルなどの鉄骨をくみ上げる職人もいます。
さらに、例えばマンションだったら、全部屋へ電気を引かなくてはいけませんし、水道などの配管関係の設備を入れなければいけません。そのため、電気設備や機械設備などの専門家も必要になります。更に、大工や飛び職人、設備技師以外にも家具屋、金物屋、フローリング屋、塗装屋、タイル屋など、一つ一つのパーツにそれぞれの専門家がいます。これらは全てサブコンと呼ばれる企業や人達ですので、いかにゼネコンが色々な企業や色々な人と一緒に仕事をするかが分かります。しかも、ゼネコンはそのサブコンを束ねる立場にいますので、ゼネコンの現場監督は多種多様な知識を求められます。
サブコンの立ち位置
ゼネコンが不動産1棟全ての管理業務を担う立場ですが、サブコンにはサブコンで現場監督がいます。サブコンの現場監督もゼネコンの現場監督と役割は同じで、自分の管轄するパートの施工管理を行います。先ほど話した通り、一つの不動産を完成するためには、様々な企業や職人が協力して造り上げます。そのため、それらをバラバラにゼネコンの現場監督が管理するのは不可能なので、それぞれのサブコンにもリーダーを置くようなイメージです。
ゼネコンとサブコンの関わり
ではここで、ゼネコンとサブコンの仕事をイメージするために、実際にどのような関わりをするのかをお話します。まず建設現場では、大抵の場合ゼネコンとサブコンの全社員・全職人が集まり朝礼を行います。そこから1日がスタートします。朝礼が終わると、サブコン各社でそれぞれ集まりサブコンの現場監督が中心となって、1日の進捗確認や安全確認を行います。サブコンの現場監督は、この最初の打ち合わせで職人や大工にまとめて指示出しをします。ゼネコン直下のサブコンの場合には、ゼネコンの現場監督がその役割を担う事もあります。
ゼネコンの現場監督は1人1物件が原則です。言い換えると、1人で何物件も担当出来るほどの余裕がないという事です。一方、サブコンは1人で数物件担当する現場監督も多いです。サブコンの現場監督も勿論大変なのですが、ゼネコンの現場監督よりは管理する範囲が狭いのです。そのため、サブコンの現場監督が不在の場合の進捗管理は、ゼネコンの社員が行う場合が多いです。このように、ゼネコンとサブコンは密接な関わりを持っています。ゼネコンはサブコンと上手く協業して一つの不動産を完成させているのです。
7. まとめ
いかがでしたでしょうか。ゼネコンの仕事内容を含めて理解出来たかと思います。一つの不動産を設計し施工し完成するまでには膨大な時間がかかります。その膨大な時間の中で、多種多様な企業と職人、そして専門家などが自分の仕事を全うしているのです。
その一つ一つの業者がサブコンであり、それら全てをまとめ上げるのがゼネコンになります。このようにゼネコンの一番大変な所は関連部署が多い点で、またそれはゼネコンの一番のやりがいでもあります。一つの建物を造るのに、これだけの手間が掛かっている事が分かると、建物の見方が変わってくるかもしれません。