今、注目の「ZEH」とは?概要から普及推進の背景、メリットについて

不動産知識
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皆さん、「ZEH」という言葉をご存じでしょうか。見たことはあるけど、なんて読むのか分からないという方もまだまだ多いかもしれません。

国は、環境に配慮したこれからの住まいとしてZEHの普及を積極的に推進していこうとしています。今回は、今注目のZEH住宅について、詳しく解説していきます。

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1. ZEH(ゼッチ)の意味とは?

ZEHとは、「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、エネルギー収支をゼロにする家のことを言います。

冷暖房や給湯・換気・照明といった生活になくてはならないエネルギー消費を、断熱性能のアップやエネルギー効率の高い設備の導入によって大幅に減らし、太陽光発電などで自らエネルギーを創り出すことで、1年間の消費エネルギーを実質ゼロ以下にするものです。

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2. ZEHを実現する3つの要素

ZEHを実現するためには「省エネ」「断熱」「創エネ」が重要な要素になります。

まず、住宅の断熱性能を上げるには、外からの熱を遮断するため、壁や床、窓に断熱性能の高い素材を使用。夏は涼しく冬は暖かい温度差の少ない室内環境を実現し、その結果エネルギー消費の削減にもつながります。

さらに、省エネのためには冷暖房や換気、給湯といった住宅設備に高効率で稼働するものを採用。照明もLEDに変更することで、無駄な電力を省くことができます。

また省エネを意識して生活するために、「HEMS」というエネルギー消費を見える化するシステムを導入することも有効です。

そして、エネルギーを住宅自らで創出するために、太陽光発電や家庭用燃料電池(エネファーム)等の再生可能エネルギーシステムを導入。

これらの三つの要素を組み合わせることで、大幅な光熱費の削減が可能になるのです。

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3. ZEH普及推進の背景と政府目標

2015年に開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択されたパリ協定では、地球温暖化防止の施策として、温室効果ガスの排出についての対策が協議されました。

そこで、「世界の平均気温上昇を工業化以前から2度以内に抑える」という「2度目標」が各国共通の長期目標として策定され、日本は「2030年にCOS排出量を2013年比で26%削減する」という国際公約を結びました。この公約に向けた取り組みの一つがZEH住宅の普及です。

エネルギー消費の高さで言えば企業や工場などと想像しがちですが、日本国内におけるエネルギー消費の約14%は住宅が占めているため、住宅の省エネに取り組めば大きくエネルギー消費を削減できることになります。

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4. ZEH普及に向けた取り組み

2014年4月に閣議決定した「第四次エネルギー基本計画」では、「2020年までに新築する注文戸建住宅の過半数で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という目標が掲げられました。

目標達成のために、大学教授やハウスメーカー、工務店の担当等で構成されるZEHロードマップ検討委員会が設置され、ZEHの定義・評価方法、ZEHの普及方策などの検討がスタート。ZEH住宅を取得する人や、ZEH住宅に改修する人に補助金を給付する「ZEH支援事業」が始まりました。今では支援事業対象も注文住宅から、建売戸建、集合住宅まで拡大しています。

2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー計画」においては、「2030年以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」とする政府目標が設定され、さらなる普及に向けた取り組みが進められています。

参考: https://www.env.go.jp/earth/ondanka/zeh/h31.html?_fsi=IH63jaOd

5. ZEHのメリット

では、ZEHのメリットについて具体的に見ていきましょう。

5-1. 光熱費が削減できる

エネルギー収支がゼロになることを目標とした家ですから、なんといっても光熱費が削減できることが一番のメリットといえます。

初期投資は一般の住宅に比べて割高になりますが、国や自治体の補助金により負担を軽減できますし、コンスタントにかかる光熱費が少なくなるため、長い目で見ればお得と言えるでしょう。

5-2. 環境にやさしい

エネルギー消費をできるだけ抑えるといことは、CO2の排出削減にもつながります。また、太陽光発電といった再生エネルギーを使うことで、地球にやさしい住宅であることもメリットと言えますね。

5-3. 快適な住空間

夏熱くて冬寒いのが当たり前といった昔の住宅と異なり、高断熱性能の備わったZEHであれば、外気温の影響を受けづらく一年中室内の気温差を少なくすることが可能です。

冬場のヒートショックを予防するため、小さなお子様や高齢者のいらっしゃるファミリー世帯にもおすすめです。快適性をアップさせるだけでなく健康面のメリットも期待できます。

5-4. 非常時にも安心

蓄電池を設置しておけば、発電した電力を蓄えておくことができます。災害時などで電気が使用できないときにも安心ですね。

6. ZEHマンションも増えている

先述したように、注文戸建住宅を対象にして始まったZEH住宅も、2018年度よりマンションなどの集合住宅も補助金制度の支援対象となりました。
そのため、少しずつZEH仕様の物件も増えてきています。

ZEHマンションには、電力の省エネ率によって100%の「ZEH-M」、75%以上の「Nearly ZEH-M」、50%以上の「ZEH-M Ready」、20%以上の「ZEH-Oriented」4つの種類があり、住戸の多い高層のマンションの場合は、創エネで賄うことのできるエネルギー消費は少なくなるため基準が低く設定されています。また、省エネ評価基準を住棟と住戸でわけて設定している点も特徴的です。

マンションにおけるZEHの支援制度は始まって間もないことから、実際に建てられているZEHマンションの数は多くはありません。しかし、2022年度税制改正では住宅ローン控除において省エネ性能の新区分が創設されており、またフラット35、その他金融機関でも住宅ローン金利で優遇が受けられるサービスを設けるなど、購入を後押しする取り組みも進められています。

ZEHは、高性能であるがゆえに建築コストが上がってしまうというデメリットがありますが、国の補助金がデベロッパーに給付されているため、一般的なマンションとの価格差は現時点ではそこまで大きくはありません。

今後、ZEHマンションの市場に参入する企業が増えてくれば、供給数も増えていくことも期待できるでしょう。

7. まとめ

今回は、ZEHについて詳しく解説してきました。おうち時間が増えて光熱費が気になるという方が多いと思います。環境にもお財布にも優しいZEHに注目してみてください。