2015年の建築物省エネ法制定以後、建物の省エネ性能強化のために様々な制度や評価基準が定められ、度重なる改正も行われています。そうした一方で、省エネ制度の内容が複雑化し、一般消費者には理解が難しい状況になっているとも言えます。
物価や光熱費の上昇といった状況からこれまで以上に注目される住宅の省エネ化。今回は、省エネ性能表示の一つ「BELS」認証についてわかりやすく解説していきます。
1. BELS(ベルス)とは
BELS(ベルス)とは、Building-Housing Energy-efficiency Labeling Systemの略称で、新築・既存を問わず、すべての建築物を対象とした省エネルギー性能等に関する認証制度となります。
2016年4月にスタートした建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)において、住宅の建築主、販売や賃貸を行う事業者は建築物の省エネルギー性能を表示するよう努めなければならないとされました。
国土交通省は、これに伴い建物のエネルギー性能の見える化及び、市場での評価が適切に行われるよう「建築物のエネルギー消費性能の表示に関するガイドライン」を制定。
そのガイドラインに基づいた第三者認証マークの一つが「BELS」です。
建物の省エネ性能を星の数で表示することで、専門的な建物性能を視覚的に誰が見てもわかりやすくし、市場への普及を促すことが目的として導入されたということですね。
ちなみに、皆さんが近頃良く目にするであろうアルファベット表記に「ZEH」があると思いますが、BELSが省エネ性能の認証制度であるのに対し、ZEHは省エネ性能の高い住宅の種類を指す言葉になります。ZEHについても後ほど詳しくご紹介します。
※ 参考記事: 「建築物省エネ法とは?省エネ法の変遷とスタートの背景、施策の概要」
参考: 建築物省エネルギー性能表示制度について(一般のお客様向け)
2. BELSの特徴とメリットについて
BELSの特徴は大きく3つあります。メリットも併せて具体的に見ていきましょう。
2-1. 5段階の星で省エネ性能をわかりやすく表示
まず1つ目の特徴は、先述したように省エネ性能を星で表示することによって誰が見てもわかりやすいということ。
星1つ~星5つの5段階で省エネ性能を表示。加えて、建物の種類ごとに定められたエネルギー消費量の標準値に対する削減率や省エネ基準への適合不可等も表示されています。
専門知識がなくても、BELS認定の表示ラベルを見れば、建物の省エネ性能がすぐにわかることは大きな特徴であると言えるでしょう。
2-2. 信頼性の高い第三者機関による評価
2つ目の特徴は、BELSは第三者機関による評価であるため、信頼性が高いということ。
ハウスメーカー等の事業者である建築主が商品性能をアピールするために建物性能を独自の基準や評価で表示することがありますが、各社によってデータの取得方法や条件、基準等が異なり、上手く比較することが難しい場合があります。
BELSは、登録された評価機関によって同じ基準で評価が行われるため信頼性が高く、消費者は建物の性能比較がしやすいと言えます。
また、信頼性の高いBELS認定を取ることは、建築主側にとっても建物価値の向上や環境問題への取り組みのアピールにもつながるという意味でメリットがあります。
2-3. ZEHの補助金や税制優遇の申請に利用できる
3つ目の特徴は、ZEH(ゼッチ)住宅の補助金制度申請に利用できるということです。
ZEHとは、建物の省エネ、創エネ、断熱性能によってエネルギー収支ゼロを実現する家のこと。国ではこのZEH住宅の普及に向けた取り組みを推進するために補助金制度を行っていますが、BELSはこの補助金申請の要件になっています。
またその他にも、フラット35や住宅ローン控除、固定資産税等の税制優遇の申請にもBELSを活用することができます。ZEH住宅は初期投資費用が大きくなる傾向にあるため、こうした補助金申請が利用できるのはうれしいですね。
※ZEHとは、「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称。
冷暖房や給湯・換気・照明といった生活になくてはならないエネルギー消費を、断熱性能のアップやエネルギー効率の高い設備の導入によって大幅に減らし、太陽光発電などで自らエネルギーを創り出すことで、1年間の消費エネルギーを実質ゼロ以下にするものです。
※ ZEHについては、「今、注目の「ZEH」とは?概要から普及推進の背景、メリットについて」で詳しく解説しています。
3. BELSの評価基準について
では、BELSで表示する省エネ評価基準について具体的に見ていきましょう。
BELSでは、5段階の星で省エネ性能を表示することは先述した通りですが、この評価の指標は「建築物の外皮性能」と「一次エネルギー消費量基準値に対する削減率」の2つを評価したものになります。
まず、「建築物の外皮性能」とは何かというと、外壁や窓等の開口部の断熱・遮熱性能のことを指します。住宅の場合はUA値(外皮平均熱貫流率)、またはηAC(冷房機の平均日射熱取得率)を記載することが可能です。UA値は値が小さいほど熱が出入りしにくく断熱性能が高く、ηAC値も値が小さいほど日射が入りにくく遮蔽性能が高いということになります。
そして、一次エネルギー消費量基準値に対する削減率は「BEI(Building Energy Index)」と言い、建物用途ごとに決められている基準一次エネルギー消費の値に対して、該当建物の設計仕様における一次エネルギー消費がどのくらいの割合かを表しています。
BEIは、設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量で計算され、この数値がより小さいほど省エネ性能評価が高いということになります。
ちなみに一次エネルギー消費量は、給湯、暖冷房、換気、照明設備の消費量の合算となり、家電等の消費量は含まれません。
住宅の星による評価基準とBEI数値
星5つ: BEI≦0.8
星4つ: 0.8<BEI≦0.85
星3つ: 0.85<BEI≦0.9
星2つ: 0.9<BEI≦1.0
星1つ: 1.0<BEI≦1.1 (※既存建築物の省エネ基準)
4. まとめ
今回はBELS認証について詳しく解説してきました。
専門的な用語や知識が必要になることが多く、中々理解が難しいことも多いと思います。
しかし、住宅の省エネ性能は、地球環境の為、そして光熱費削減といった家計や住まいの快適性の向上のためにも、今後欠かすことのできない必須要件と言えます。
省エネ住宅は初期費用が高い傾向にはありますが、国も省エネ住宅の普及に向けて様々な優遇措置も行っているため、住宅取得の際にはぜひ事前に確認して上手に活用しましょう。
ぜひ、この記事を参考に省エネ住宅や性能について興味を深めていただき、住宅取得の際にもお役立ていただければと思います。