皆さん、「内装制限」という言葉はご存じでしょうか。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、建築基準法で定められた内装に係る制限のことを言います。マンションでのリフォームやリノベーションにも関係するものになるため、検討されている方であれば知っておくべき知識です。
今回は、この内装制限とは何か、主にマンションのリノベーションやリフォームに関する部分について詳しく解説していきます。
1. 内装制限とは?概要について
内装制限とは、建物の室内で火災が発生した際に、火災の拡大や有害ガスの発生によって避難が妨げられるといったことにならないように定められた内装に関する規制のことを言います。
内装制限の対象は、建築物の用途や規模等によっても異なりますが、一般的に1.2m以上の高さの壁・天井となります。炎は上にあがるため、床や建具は対象外となるということですね。
1-1. 内装制限の対象となる建築物
内装制限の対象となるのは、劇場や映画館、病院、ホテルといった特殊建築物、大規模建築物、キッチン等の火気使用室、政令で定める無窓居室といった四つの種類に分類されます。
ただし、これらすべてが対象となるわけではなく、建物の用途や構造、規模、階数や地域等によっても内装制限の要否が異なります。
特殊建築物にあたるもの
- 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場等
- 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等
- 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー,ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店又は物品販売を営む店舗(10㎡以内を除く)
- 自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ又はテレビスタジオ
- 地下又は地下工作物内に上記1.2.3の用途の居室を有する物
1-2. 内装の制限
内装の制限の範囲は、主に居室や通路の壁・天井の仕上げに防火性能を持つ材料(難燃材料、準不燃材料)を使用するというものです。
防火材料は一般的な建築材料に比べて発火が遅いもので、材料を加熱したときに何分間燃えない時間が継続するかで3種類に分けられています。
不燃性能が持続する時間は、最も防火性能の高い不燃材料が20分、準不燃材料が10分、難燃材料が5分となっています。それぞれの建材の種類は下記のとおりです。
- 不燃材料: コンクリート、ガラス、モルタル、鉄、厚さ12mm以上の石膏ボード等
- 準不燃材料: 厚さ15mm以上の木毛セメント板、熱さ9mm以上の石膏ボード等
- 難燃材料: 厚さ7mm以上の石膏ボード、熱さ5.5mm以上の難燃合板
2. マンションのリノベーション、リフォームにおける内装制限について
新築の建築物だけでなくマンションのリノベーションやリフォームの場合も内装制限の対象となります。管理規約に記載された工事内容の制限だけでなく、建築基準法や消防法などの法令に沿って行う必要があるので注意が必要です。
ここでは、マンションのリノベーションやリフォームの際の内装制限について詳しく見ていきます。
2-1. 内装制限の緩和(適用除外)について
マンション(共同住宅)は特殊建築物にあたり、また規模によっては大規模建築物の対象にもなります。しかし、すべてのマンションが対象となるわけではなく、一定の条件を満たせば内装制限が緩和される規定(適用除外)があります。
マンションの内装制限が緩和される条件には下記のものがあります。
特殊建築物の適用除外規定
- マンションの場合、200㎡耐火構造の床・壁または既定の防火設備で区画)されている
大規模建築物の適用除外規定
- 床面積100㎡ごとに、準耐火構造の床・壁または既定の防火設備で区画されている
- 耐火建築物・準耐火建築物で高さ31m以下(約10階)にあるの両方を満たす場合
ちなみに、マンションはほとんどが鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造ですから、不燃材料を構造に要した建物になるため、耐火構造の建物となります。
以上のことから、マンションの場合に内装制限の対象となるのは、下記の条件の場合と言えます。
- 高さ31m以上(約10階以上)の高層マンション
- 住戸の面積が100㎡を超えている
また、キッチンやボイラーのある浴室は原則的に内装制限の対象となりますが、こちらも建物の主要構造が耐火構造である場合、火気使用室でも内装制限は適用されません。
先述したようにマンションは耐火構造の建物であるため、マンションの火気使用室については内装制限を受けないということになります。
ただし、これら以外にも様々な条件があるため、実際に内装を行う際には、マンションごとに確認を行った上で実施することが重要です。
2-2. マンションのリフォーム、リノベーションでの内装制限にあたる具体例
マンションのリフォーム、リノベーションで内装制限に該当するよくある事例についてご紹介しましょう。
例えば、天井や壁面にクロスではなく無垢材を使用したいといった場合、10階以上で100㎡を超えている物件では内装制限によって1.2m以上の壁・天井では使用することができません。同じマンションで同じ広さのお部屋だとしても、低層階ではできるインテリアや内装も高層階ではできない場合があるということですね。
内装制限を受ける場所で使用できない建材としては、無垢材以外にも、防火認定を受けていない木材、輸入クロスや紙のクロスなども該当するため、使用を検討されている方は注意しましょう。
ただし、スプリンクラーなどの自動式消火設備や建築基準法の規定に適合した排煙設備を設けた場合は内装制限の適用除外となります。
3. まとめ
今回は、内装制限について詳しく解説してきました。新築だけではなくリフォームやリノベーションにおいても関わりのある内容であるため、検討される方であれば知っておくべき知識です。
マンションは共同住宅ですから、火災になった際には周囲への影響も大きくなります。そのため、内装制限を順守することは非常に重要だと言えますね。知らない間に違反していたということのないよう、今回の記事をぜひ参考にしてください。