心理的瑕疵とは?不動産購入の際に知っておきたい告知義務について

不動産知識
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皆さん、「事故物件」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。何等かの理由で住人が死亡した経歴のある物件、特に殺人や火災、自殺などの死亡原因のものを指すことが多いのですが、明確な判断基準はありません。
しかし、こうした内容は「心理的瑕疵」にあたるため、物件の売主や貸主には告知義務があります。

この記事では、不動産取引で知っておきたい「心理的瑕疵」について、概要や心理的瑕疵に対する告知義務について解説します。

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1. 心理的瑕疵とは

不動産売買では「瑕疵」という言葉を良く使用します。一般的にはあまり使用しない言葉のため、「心理的瑕疵」についてご説明する前に、まず「瑕疵」の意味から見ていきましょう。

「瑕疵」は傷や欠点のことで、法律的には本来一般的には備わっていて当然の機能が備わっていないことを意味します。

「瑕疵」には、土地や建物の目に見える物理的な欠陥を指す「物理的瑕疵」。建築基準法や都市計画法等に触れる欠陥を指す「法律的瑕疵」。不動産そのものではなく周辺環境に関する問題を指す「環境的瑕疵」。そして「心理的瑕疵」の4つの種類に分類されます。

「心理的瑕疵」とは、大まかにいうと、不動産取引で買主や借主にとって心理的な抵抗が生じる恐れがあることを言います。事象に対して、買主や売主がどのように感じるかが重要視されるため、明確な基準はありません。

心理的瑕疵にあたる例で言えば、前住人の自殺や他殺、孤独死、事故死などがありますが、同じ物件内や周辺での事件や事故、また、近くにお墓や心霊スポットがある、騒音や悪臭が発生する施設がある、暴力団事務所があるといったものもあり、実は範囲が広いものです。

分かりやすく言えば、「『それを事前に知っていたら、この物件を買おうと思わなかった』というもの」ですね。

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2. 心理的瑕疵の告知義務について(契約不適合責任)

宅建業法では、宅建業者が告知義務を負うことを定めているため、瑕疵について知りながら故意に伝えなかった場合は宅建業法違反にあたり、民法における契約不適合責任を問われることにもなります。

「契約不適合責任」とは、従来「瑕疵担保責任」とされていた売主責任が、2020年4月の民法改正により撤廃されて、新たに創設されたもの。
売買契約において、引き渡された売買の目的物が契約の内容に適合しない場合、売主が買主に対して負うことになる責任で、買主は売主に対して、追完請求、代金減額請求、契約会社、損害賠償のいずれかを請求できます。

では、どのような内容が心理的瑕疵の告知義務にあたるのでしょうか。

過去の判例から見ていくと、自殺、殺人事件、不審死、変死、焼死などに加え、隣の部屋で事故が起こった場合も告知義務にあたる事象と考えられます。

病死や自然死等の事件性がないもの、マンションの飛び降り自殺も心理的瑕疵に該当しないとして告知義務に当たらないと考えられます。

ただし、長期間発見されず腐乱した状態の死亡の場合は、心理的瑕疵に当たる可能性があります。

しかし、先にも説明しましたが、心理的瑕疵には明確な基準がなく、受け手の感情が重要視されるためどのラインから告知義務が発生するかは非常に難しい点で法律的な基準もないというのが現状です。

不動産購入の際には、売買契約書や重要事項説明書をしっかり確認し、気になった点はきちんと質問するなど、できるだけトラブルのないように注意する必要があります。

※ 併せて「不動産広告で見かける「告知事項あり」の意味とは?物件選びの注意点も」もご覧ください。

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3. 心理的瑕疵の取り扱いに関する国交省ガイドラインについて

これまでご説明してきた通り、心理的瑕疵は内容や時期等に明確な判断基準がないため、訴訟や損害賠償などのトラブルになるケースが多く発生しています。
死亡原因や時期等も一つ一つ異なるために個別性が強く、買主・借主側の感情に依るところも大きく、判断の線引きが難しいというのが実情です。

また、売主や賃貸物件のオーナーさんは、買い手や借り手がつかなくなることを恐れて、事実を伏せるというケースもあります。

そうした状況において、国土交通省の「不動産ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~」では、今後重点的に解決すべき政策課題として「心理的瑕疵を巡る課題の解決」が盛り込まれており、国も瑕疵物件の流通について本格的に検討を始めています。
そして、2021年5月20日には、不動産取引における心理的瑕疵の取り扱いについてまとめた「心理的瑕疵ガイドライン(案)」を公表し、意見募集を開始しました。

案では、他殺や自殺・事故死、原因不明の死亡は告知対象。病死・老衰といった自然死は告知の必要はないが、長期間にわたって人知れず放置されたことにより臭気・外注等が発生し、特殊清掃等が行われた場合は告知するものと明記されました。時期については、賃貸借契約では概ね3年間は告知すべきことが記されていますが、売買契約については参照すべき凡例や取引実務等が十分に蓄積されていないことから時期の目安は記載されていません。

まだ現段階ではガイドライン案のため、これからパブリックコメントを集めて検討されていくものですが、実際に策定されれば告知義務についての判断がわかりやすくなり、心理的瑕疵の対象となる物件取引におけるトラブルが少なくなると思われます。

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4. まとめ

不動産取引における心理的瑕疵について、概要から告知義務の内容、そして現在検討が進んでいる国交省のガイドライン案についてご説明してきました。心理的瑕疵は受ける側の感情によるところが大きいため、現時点では判断基準が明確でなく難しいものです。

今後、ガイドラインが策定されれば、心理的瑕疵に関する不動産取引のトラブルが減少すると思われます。
ぜひ、皆さんの不動産購入検討の参考になさってください。