リフォームやDIYの床材選びで、選択肢の多さに悩んでいませんか?
特に「塩ビタイル(フロアタイル)」は、インスタグラムやインテリア雑誌でも頻繁に取り上げられ、そのおしゃれさとコストパフォーマンスの高さから注目を集めています。
しかし、似たような素材である「クッションフロア」や、最新素材「SPC」と何が違うのか、正確に理解している人は意外と多くありません。
1. そもそも「塩ビタイル」とは?用語の整理


まずは、複雑な呼び方を整理しましょう。ここを理解すると、カタログや商品選びがグッと楽になります。
1-1. 「塩ビタイル」と「フロアタイル」は同じもの
結論から言うと、この2つは同じものです。
- 正式名称: 塩化ビニルタイル(素材がポリ塩化ビニル=PVCであるため)
- 通称・商品名: フロアタイル(サンゲツや東リなどのメーカーが使うカテゴリ名)
厚み2.5mm前後の薄くて硬い板状の床材で、カッターで切れる施工性の良さと、石や木をリアルに再現したプリント技術が特徴です。
1-2. 「LVT」とは何か
海外インテリアや高級ラインでよく見る「LVT」は、Luxury Vinyl Tile(ラグジュアリー・ビニル・タイル)の略です。
基本的な素材は同じですが、より構造を多層化して耐久性を高めたり、デザインを精巧にしたりした「塩ビタイルの上位互換」と捉えてください。現在、日本でおしゃれなフロアタイルとして売られているものの多くは、このLVTの基準を満たすものです。
2. 【比較】塩ビタイル・クッションフロア・SPCの違い
ここが床材選びの最大のポイントです。
同じ「塩ビ(プラスチック)」系の床材でも、種類によって適した用途は全く異なります。失敗しないために、以下の3つの違いを押さえてください。
2-1. クッションフロア(CF)との決定的な差
どちらも塩化ビニル素材ですが、違いは「硬さ」と「形状」です。
- クッションフロア(CF):
- 特徴: ロール状のシート。柔らかく、フカフカしている。
- メリット: とにかく安い。継ぎ目が少なく防水性が高い。
- デメリット: 安っぽく見える。家具の重みで跡がつく。
- 塩ビタイル:
- 特徴: ピース状のタイル。硬く、表面がリアル。
- メリット: 本物のような高級感。家具のへこみに強く、傷に強い。
- デメリット: 目地(隙間)があるため、水没には弱い。
「安さと防水性ならクッションフロア」「見た目と耐久性なら塩ビタイル」という住み分けになります。
2-2. 最新素材「SPC床材」との関係


最近、塩ビタイルの進化版として「SPC(Stone Plastic Composite)」が登場しました。これは樹脂に「石灰岩」を混ぜたものです。
通常の塩ビタイルは「熱で伸び縮みする」という弱点がありますが、石を混ぜたSPCはこの弱点を克服しています。
- 床暖房を使いたい
- 日当たりの強い窓際で使いたい
- 接着剤を使わずに施工したい(はめ込み式が多い)
このような場合は、通常の塩ビタイルよりもSPC(クリック式フロアタイルなど)を選ぶのがプロの推奨です。
3. プロが評価する塩ビタイルの「実力」
では、実際に塩ビタイルを導入すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。忖度なしの実力を解説します。
3-1. 選ばれる5つの理由(メリット)
- 圧倒的な「本物感」:最新のエンボス加工技術は凄まじく、プロでも触るまで木材や石材と見分けがつかないレベルです。
- コストパフォーマンス:本物の無垢材や大理石に比べ、材料費は圧倒的に安価。施工費も抑えられます。
- 土足もOKな耐久性:店舗でも使われるほど摩耗に強く、キャスター付きの椅子でも傷がつきにくいです。
- メンテナンスフリー:ワックス不要で、水拭きだけでキレイになります。
- 部分補修が可能:万が一傷ついても、その1枚だけを剥がして交換できます(シート状の床材にはできない芸当です)。
3-2. 知っておくべき弱点(デメリット)
- 「冷たさ」と「硬さ」:素材が薄く硬いため、冬場はヒヤッとします。クッション性がないので、長時間立つと疲れやすいです。
- 熱による突き上げリスク:前述の通り、熱で膨張するため、床暖房の上に通常の塩ビタイルを貼ると、目地が突き上がってくる可能性があります。
- 目地からの浸水:表面は水を弾きますが、目地は防水ではありません。脱衣所はOKですが、浴室の洗い場などには不向きです。
4. 施工タイプ別:DIYにおける選び方
DIYで塩ビタイルを貼る場合、施工方法は「今の床をどうしたいか」で選びます。
賃貸にお住まいの方は、床を傷つけない「置くだけタイプ」か「はめ込みタイプ」を選ぶのが鉄則です。
5. 後悔しないための最終チェックリスト
最後に、「ここだけは確認してほしい」ポイントをお伝えします。
チェック(1) サンプルは必ず「現物」を見る
画面上の色味は当てになりません。特に重要なのは「質感」と「厚み」です。
サンプルを取り寄せたら、実際に床に置き、昼の自然光と夜の照明の両方で色味を確認してください。また、素足で踏んでみて肌触りを確かめることも重要です。
チェック(2) ドアの開閉(クリアランス)を確認
既存の床の上から重ね貼りをする場合、床が2.5mm~5mmほど高くなります。
ドアの下に隙間がないと、ドアが開かなくなる事故が多発します。事前に定規を当てて、ドアと床の隙間を確認しましょう。必要に応じて「見切り材」の準備も忘れずに。
6. まとめ


塩ビタイル(フロアタイル)は、「デザイン性」「耐久性」「コスト」のバランスが最も優れた床材の一つです。
- 予算を抑えつつ、モデルルームのような高級感を出したい
- 掃除の手間を減らして、長くキレイに使いたい
- ペットや家具による床の傷を気にせず過ごしたい
このようなニーズをお持ちの方にとって、塩ビタイルは最適な選択肢となるでしょう。



