近年、台風や大雨、地震などの自然災害が多数発生しており、皆さんの防災に対する意識も高まっていると思います。マンションは災害に強いというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、特有の注意すべき点も多くあります。
この記事では、防災におけるマンションの強み・弱みや注意すべき点、災害に強いマンション選びについて解説します。
1. マンションで気をつけるべき被害
まず、災害時にマンションで注意すべき被害について見ていきましょう。
マンションは、戸建て住宅に比べて耐震性に優れているといわれています。
特に新耐震基準の物件であれば、震度6強以上の揺れでも倒壊しない基準で作られており、構造的には地震に強いと言えます。
しかし、上層階では低層階に比べて揺れが大きくなるため、室内の家具や家財の固定などをしっかりと行う必要があります。
また、マンションの場合、停電によって共用設備が使用できなくなることもあります。エレベーターやオートロック施錠、電動の給水ポンプなどといったライフラインに係る部分も使用できなくなることも想定しておきましょう。
マンションによっては、地下や一階に機械室が設けられている場合があります。機械室が水没した場合は、長期間停電することもあります。
2. マンションの強み、弱み
では、防災上のマンションの強み、弱みについて見ていきます。
マンション一番の強みと言えば、やはり耐震性・耐火性といった構造の強さと言えます。東日本大震災のデータでは、東北・関東のマンションで致命的な被害のあったマンションはなく、「被害なし」が81.23%、「軽微」が16.13%という結果だったそうです。この結果からみても、マンションの場合、倒壊のリスクはかなり低いと言えます。
また、マンションの共用部分や防災設備、備蓄などを、住民がみんなで利用できることは大きな強みと言えますね。
一方、先述したように、共用設備に被害があった場合は、全住民に影響が及んでしまうことが弱みと言えます。特に、ライフラインに係る設備が使用できなくなった場合などは、復旧までに時間がかかることもあります。電気、ガス、水道、受水槽などの給水設備や排水管等の破損など、こうした事態が起こる事態に備えておく必要があります。
また、マンションの「高さ」が弱みになる場合もあります。エレベーターが停止した場合、高層階の住戸では移動や物の運搬にかなりの負担を要することになります。特に高齢の方がいらっしゃる場合は注意が必要です。
参考: (社)高層住宅管理業協会 東日本大震災の被災状況について(続報)
3. マンション防災対策、備えておきたいこと
では、実際に災害が起こった際の対策、事前に備えておきたいことについて、具体的に見ていきましょう。
まず、災害時に在宅で避難することを想定し、ライフラインが停止した場合に生活に必要なものを備蓄しておくことが最も重要です。エレベーターが利用できず、運搬が難しくなることも考え、十分な備えを行いましょう。
過去の災害では、発生からライフラインの復旧までに1週間以上かかるというケースが多くみられました。そのため、1週間程度の備蓄(最低でも3日間)は用意しておくのが望ましいでしょう。
飲料水であれば、大人1人あたり一日3リットルは必要です。また、災害用の携帯トイレがあれば、排水ができなくても自宅のトイレを利用できるため、必要な量を計算し、準備しておきましょう。
ガスの復旧は遅れるケースが多いため、卓上のカセットコンロやガスボンベを用意しておきましょう。その他、懐中電灯、充電式携帯ラジオ、電池、ビニール袋やラップ、常備薬など、備えておくこととよいでしょう。
また、防災グッズはいざという時にすぐ出せる場所に準備しておくことも大切です。
※ 参考記事: 「防災グッズはどこに収納する?おすすめの場所やポイントを解説!」
食料品も備蓄が必要ですが、日常的にレトルト食品や缶詰などを少し多めに買っておくことをおすすめします。常に消費していけば、消費期限の管理は必要ありませんね。
※ 参考記事: 「収納の基本!ローリングストックを無駄なく実践!備蓄品リストまで」
その他にも、個人の生活スタイルにあわせて必要なものを確認し、準備しておきましょう。
次に、被害が発生した際の行動についても確認していきます。
マンションでは、避難の際にはエレベーターは使用できません。稼働していたとしても利用は避けてください。
玄関から避難できないときは、バルコニーの蹴破り戸を破って移動することになります。非常階段や玄関などが使えない場合は、避難ハッチで下の階におりることも想定し、どの部屋に設置されているか確認しておきましょう。
そのため、バルコニーは災害の際に使用する避難経路となるため、日ごろから物を置かないように注意しましょう。
4. 災害に強いマンション選び
マンション選びの際に、より災害に強い物件を見極めるにはどこを確認すべきでしょうか。
具体的なポイントを見ていきましょう。
4-1. マンション構造について
マンションの構造は、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリート造のため、もともと構造躯体自体が災害に強いといえます。より地震に強いマンションを選びたいという場合は、地震に対する構造の強度基準である耐震基準が、1981年改正後の「新耐震基準」をクリアしているかを確認しましょう。
ただし、築年が経過した旧耐震基準の物件であっても、管理状況や防災対策、メンテナンスがされていることで建物の耐震性は保たれるため、耐震基準だけでなく、管理についてもきちんと確認されることをおすすめします。
また、近年のマンションは、耐震性がより強化された構造のものが増え、地震の揺れや衝撃を和らげる制震構造、揺れを吸収する免振構造などの技術を導入しているマンションもあります。より耐震性を求める方は確認してみてください。
※ 耐震基準については、「旧耐震基準とは?新耐震基準との違いから、確認方法、選ぶ際の注意点」で詳しく解説しています。
そして、もう一つ構造でチェックしておきたいのが、電気や受水槽・ポンプ等のライフライン設備の場所です。地下や1階に集約されている場合は、大雨による浸水で被害を受けてしまう可能性があるため、注意が必要です。
4-2. 立地、地盤
災害に強いマンション選びには、立地と地盤の確認は重要です。自治体のホームページにあるハザードバップで、浸水・洪水想定を確認しましょう。
また、地盤が強い土地は、地震による地盤沈下などのリスクが少ないと言えます。一般的に、海に向かって地盤の強度は弱くなっていくとされますが、インターネットなどで地盤状態を確認できるウェブサイトなども活用し、情報収集しましょう。
地震や災害に強いエリアについては、他の記事でも紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
※ 参考記事: 「中古マンション購入時にも役立つ!地震や災害に強いエリアは?」
4-3. 管理組合の防災対策
管理組合の防災対策等の活動、定期的なメンテナンスについてもチェックしましょう。
防災訓練や災害備蓄、マニュアル作成をきちんと行っているか、構造部分のメンテナンスが定期的に行われているかなど、マンションの管理組合の防災意識の高さを確認することも非常に重要です。
5. まとめ
今回は、マンション防災に関して、気をつけたい点や備えておきたいこと。そして、災害に強いマンション選びについて解説してきました。
災害はいつどこでおこるかわからないもの。日ごろから災害を想定し、準備をしておくことが重要です。