不動産取得税は軽減できる?基本概要と軽減措置の内容、必要書類とは

住宅ローン・税制
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住まいを購入する際には、物件価格の他に様々な諸費用や税金が掛かります。その一つが「不動産取得税」。不動産を取得した人が必ず支払う義務のある税金です。

不動産取得税には、要件を満たした場合に税額の軽減が受けられる制度があるため、住まいの購入を検討されている方は、軽減措置について必ず理解しておく必要があります。

この記事では、不動産取得税の基本概要や金額の算出方法、また不動産取得税の軽減措置を受けるための必要書類や申告方法、注意点について解説していきます。

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1. 不動産取得税とは

まず、不動産取得税の概要について見ていきましょう。

不動産取得税は、新築、中古にかかわらず、戸建て、マンションなどの建物、土地といった不動産を取得、または贈与したすべての人に課せられる税金。不動産の所在地の都道府県に支払う地方税です。

不動産を購入した際に掛かる税金としては、不動産取得税の他に固定資産税や都市計画税がありますが、これらは毎年支払う必要があります。対して、不動産取得税は不動産を取得した際に1度だけ納めるものであるため、不動産購入の初期費用の一つとして考えておくべき費用です。

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2. 不動産取得税の算出方法について

では、不動産取得税額はどのように算出するのか、詳しく見ていきましょう。

不動産取得税は、「取得した不動産の価格」に税率を掛けて計算します。
そこで一つ注意が必要なのが、「取得した不動産の価格」は不動産を実際に購入した価格ではなく、市町村の固定資産課税台帳に登録された価格である「固定資産評価額」で算出するということです。
また、取得した不動産の建物・土地それぞれに課税されることも覚えておきましょう。

そして、税率にも注意が必要です。
不動産取得税算出の税率は原則4%ですが、土地・建物の取得の場合、特例によって、2024年(令和6年)3月31日までは3%となります。(住宅以外の家屋の標準税率は4%)

したがって、実際に不動産取得税を算出する方法は、下記のとおりです。

「不動産取得税=固定資産税評価額×税率3%」

固定資産税評価額とは

固定資産税評価額とは、固定資産税の基準となる固定資産課税台帳に記載された土地・家屋の評価額のこと。確認するには、市区町村の役所で固定資産課税台帳を閲覧する方法の他、毎年市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書で確認する方法がありますが、不動産購入時であれば不動産仲介会社の担当に確認するのが良いでしょう。

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3. 不動産取得税の軽減措置について

固定資産税評価額の3%と言っても、数十万円にもなる不動産取得税。初期費用の中でも負担の大きいものです。
不動産取得税には、一定要件に該当すれば軽減措置が受けられる制度があるため、必ず確認を行い、上手に制度を活用していきましょう。

軽減措置の要件は、不動産の種類によって異なるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1. 宅地の軽減措置

宅地用に取得した土地は、2024年(令和6年)3月31日までに取得した場合、固定資産税評価額が1/2になります。

したがって、宅地の課税標準額は下記のように算出します。

「宅地の課税標準額=固定資産税評価額×1/2」

3-2. 新築住宅の場合の軽減措置

次に、新築住宅の不動産取得税の軽減措置について、建物と土地に分けて見ていきましょう。

3-2-1. 軽減措置の対象となる新築の建物要件と控除額

軽減措置が受けられる新築の建物の要件は、下記の2点。

  • 一戸の床面積が50㎡(戸建て以外の賃貸住宅40㎡)以上、240㎡以下であること
  • 個人の居住を目的とした住宅であること(セカンドハウス含む)

なお、マンションなどの共同住宅の場合、床面積は共用部を所有者で案分した面積も含みます。

こちらの要件を満たした場合、建物に対しては、固定資産税評価額から1,200万円が控除されます。これは戸建てだけでなく、マンションなどの共同住宅でも同様です。

新築建物の不動産取得税=(固定資産税評価額-1,200万円)×税率3%

1,200万円が控除されるということは、新築建物の固定資産税評価額が1,200万円に満たない場合は、税金が掛からないということですね。軽減措置を受けると受けないとでは大きく違うことが分かると思います。

長期優良住宅の特例措置について

取得した新築住宅が長期優良住宅の基準を満たした場合、特例として100万円上乗せされ、1,300万円の控除が受けられます。
この特例は2022年(令和4年)3月31日までに申請することで軽減が受けられます。

長期優良住宅とは、長く住み続けられるための要件に満たした住宅のことを言い、国は長期優良住宅の普及の促進を行っています。そのため、長期優良住宅に認定された住宅は控除額が大きくなるのですね。

長期優良住宅の要件は、長期に使用できる構造や設備、居住環境への配慮などがあり、申請が必要ですが、対象になれば不動産取得税の他、固定資産税と登録免許税の減税、住宅ローン金利の引き下げなどの優遇措置が受けられるため、メリットが大きいと言えます。

参考: 東京都主税局 認定長期優良住宅にかかる固定資産税・不動産取得税が軽減されます  

3-2-2. 軽減措置の対象となる新築住宅の土地要件と控除額

軽減措置が受けられる新築住宅の土地の要件は、下記の3点。

  • 新築する住宅が軽減措置の対象要件を満たしていること
  • 住宅を新築する場合、土地を取得してから3年以内であること
  • 住宅を先行して建築した場合、新築1年以内に土地を取得すること

そして、土地の控除額は、以下の2つのうち多い金額が適用されます。

A.45,000円
B.(土地1㎡当たりの固定資産税評価額 × 1/2) × (課税床面積 × 2(200㎡限度)) × 税率3%

したがって算出方法は下記のとおりです。

3-3. 中古住宅の場合の軽減措置

では次に、中古住宅の不動産取得税の軽減措置について、建物と土地に分けて見ていきましょう。

3-3-1. 軽減措置の対象となる中古の建物要件と控除額

中古住宅で軽減措置を受けるには、新耐震基準を満たしている建物である必要があります。したがって、新耐震基準が適用された1982年以降に建築された建物か、築年が古くても新耐震基準を満たしているかが要件となります。

軽減措置が受けられる中古建物の要件を詳しく見ていきましょう。

  • 一戸の床面積が50㎡以上、240㎡以下であること
  • 個人の居住を目的とした住宅であること(セカンドハウス含む)
  • 耐震基準要件、以下のいずれかに該当するものであること
  1. 昭和57年1月1日以降に新築されたものであること
  2. 昭和56年12月31日以前に新築された住宅で、建築士等が行う耐震診断によって新耐震基準に適合していることの証明がされたもの(ただし、当該証明に係る調査が取得日前2年以内に終了しているものに限る。)、既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のものであること 
  3. 新耐震基準に適合しないが、入居前に新耐震基準に適合するための改修を実施する一定の中古住宅であること

そして、新築した日に応じた額が、固定資産税評価額から控除されます。

したがって、中古建物の不動産取得税の算出方法は下記のとおりです。控除額は下記の表を参照ください。(控除の金額は都道府県により若干異なります。)

中古建物の不動産取得税=(固定資産税評価額-控除額※)× 税率3%

※ 控除額(東京都)

新築された日控除額
1997年(平成9)年4月1日以降 ~1,200万円
1989年(平成元年)4月1日 ~ 1997年(平成9年)3月31日1,000万円
1985年(昭和60年)7月1日 ~ 1989年(平成元年)3月31日450万円
1981年(昭和56年)7月1日 ~ 1985年(昭和60年)6月30日420万円
1976年(昭和51年)1月1日 ~ 1981年(昭和56年)6月30日350万円
1973年(昭和48年)1月1日 ~ 1975年(昭和50年)12月31日230万円
1964年(昭和39年)1月1日 ~ 1972年(昭和47年)12月31日150万円
1954年(昭和29年)7月1日 ~ 1963年(昭和38年)12月31日100万円

3-3-2. 軽減措置の対象となる中古住宅の土地要件と控除額

軽減措置が受けられる中古住宅の土地の要件は、下記の3点。

  • 土地に建てられた建物が軽減措置の対象要件を満たしていること
  • 住宅よりも先行して土地を取得した場合、1年以内に建物を取得すること
  • 住宅を先行して取得した場合、1年以内にその土地を取得すること。

そして、土地の控除額は、新築同様に以下の2つのうち多い金額が適用されます。

A.45,000円
B.(土地1㎡当たりの固定資産税評価額 × 1/2) × (課税床面積 × 2(200㎡限度)) × 税率3%

したがって算出方法は下記のとおりです。

土地の不動産取得税¬=(固定資産税評価額 × 1/2 × 3%)-控除額(下記AかBの多い金額)

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4. 不動産取得税、軽減措置を受ける際の申告方法と注意点

ここからは、不動産取得税の申告方法や注意点について見ていきましょう。

住宅を購入したら、自治体の都道府県税事務所に不動産取得税の申告を行う必要があります。自治体によっては、自動的に申告してくれる場合もありますが、軽減措置を確実に受けるために60日以内に申告を行いましょう。

申告後は、都道府県税事務所から納付書が届き次第納税しましょう。支払方法は、管轄の税務事務所や金融機関の窓口、コンビニエンスストア、クレジッドカード払い、スマートフォンの決済アプリなどがあります。

なお、軽減措置により納税額が0円の場合は、納付書が送られてこない場合もあるため、注意しておきましょう。

軽減措置の申告に必要となる、主な書類は下記のとおりです。

  • 不動産取得税申告書
  • 不動産取得税課税基準の特例適用申告書
  • 不動産取得税減額適用申請書(土地用)
  • 不動産取得税減税適用申請書(建物用)
  • 売買契約書(写し)
  • 登記事項証明書

上記に加え、昭和56年以前築の中古住宅の場合、耐震基準を証明する書類の提出も必要です。
ケースによっては、その他に提出が必要になる書類もあるため、詳しくは管轄の税務事務所に確認しましょう。

参考: 東京都主税局 不動産取得税
参考: 国土交通省 不動産取得税に係る特例措置
参考: 東京都主税局 不動産取得税 都税Q&A

5. まとめ

今回は、不動産取得税について、概要から算出方法、軽減措置の内容や適用要件について解説してきました。不動産取得税は、軽減措置の対象となる不動産を取得した場合、申告するとしないとでは金額が大きく変わってきます。
少しでも不動産購入時の初期費用を抑えられるよう、しっかりと確認して活用しましょう。