フラット35は、最長35年の長期固定金利型の住宅ローンのこと。メリットも多いことから利用を検討している方も多いのではないでしょうか。
フラット35には、省エネや耐震、耐久性等の一定の基準を満たす住宅を購入する場合、より借入金利が引下げられる「フラット35S」という商品があります。
今回は、フラット35、フラット35Sの商品内容や、中古住宅における適用基準、そしてより質の高い住宅の取得を後押しする、2022年より新設された新制度についても詳しく解説していきます。
1. フラット35とは?
まず、フラット35の概要について詳しく見ていきましょう。
1-1. フラット35の概要
冒頭でもお伝えしたように、フラット35は最長35年間の長期固定金利型の住宅ローンのことを言い、独立行政法人住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する住宅ローン商品です。
全期間固定金利のため、金利変動がないため安心ですし、借入時に全体の返済額が確定するため返済計画も立てやすい他、保証料不要、繰上げ返済手数料も無料という点でも通常の住宅ローンに比べてメリットがあります。
利用には、住宅金融支援機構の技術基準に適合しているかを確認する物件検査を行った上で、検査機関に適合証明書を発行してもらう必要があります。
1-2. フラット35の主な適用基準、中古マンションの場合は?
フラット35の利用には、住宅金融支援機構の定める技術基準を満たす必要があります。接道、住宅規模や企画、耐久性、耐震性等細かい基準がありますが、主な項目を中古マンションの場合に絞ってご紹介します。
耐震性を満たすこと
中古マンションのフラット35適用基準の主な項目として耐震性があります。新耐震基準(建築確認日が1981年6月1日以降)で建てられた物件であること、もしくは築年数が古い物件でも、建物の形状等が耐震評価基準を満たせば利用は可能です。なお、耐震評価の確認は設計図書で行います。
床面積が30㎡以上
共同住宅(マンション)の場合は、新築・中古共通で床面積は30㎡以上である必要があります。これはご自身でも簡単に調べられるため、まず利用対象となるかのベースとして確認してみましょう。
維持管理に関する基準を満たすこと
中古マンションは管理体制が住宅の品質に大きくかかわります。そのため、維持管理に関する基準が定められており、管理規約の他、20年以上の長期修繕計画があることも条件となります。
1-3. 対象となる中古マンションを簡単にサイトで確認可能
フラット35の適用基準を満たす物件かどうかを、一つ一つ確認するのは大変ですよね。
実は、フラット35が利用できるマンションかどうかを簡単に調べることのできる「中古マンションらくらくフラット35」という住宅金融支援機構のサイトがあります。
利用を検討する物件がある場合は、まずこちらのサイトで検索してみることをおすすめします。
なお、掲載されているのは既に物件検査を受けたもののみになるため、適合基準を満たす物件でも、物件検査がされていない場合は掲載されていません。
もしサイト内に該当がない場合も利用できる場合があるため、実際に検討される際は、お問い合わせください。
2. フラット35Sとは
では、フラット35Sの概要について詳しく見ていきましょう。
2-1. フラット35Sの概要
フラット35Sとは、省エネ性能や耐震性等の優れた住宅性能を備えた住宅を購入される際に、フラット35の借入金利を一定期間引き下げるというものです。
フラット35Sには、金利が引き下げられる期間が異なる「金利Aプラン」と「金利Bプラン」の2つのプランがあります。
より金利の引き下げ期間が長いのがAプランとなっており、対象住宅に求められる住宅性能の適用基準は高くなっています。
フラット35とフラット35Sの比較
フラット35 | フラット35S(金利Aプラン) | フラット35S(金利Bプラン) |
年1.530% | 当初10年間 年△0.25% | 当初5年間 年△0.25% |
2-2. フラット35Sの適用基準
フラット35Sの利用には、前述したフラット35の技術基準に適合したうえで、Aプラン、Bプランそれぞれで定められる「省エネルギー性」「耐震性」「バリアフリー性」「耐久性・可変性」の4項目のいずれか1つを満たす必要があります。
Aプラン、Bプランで異なる点は、金利引き下げ期間が長いAプランのほうがより住宅性能に求められる基準が高いということ。そして、Aプランが「新築・中古住宅共通の基準」のみであるのに対し、Bプランのほうは、「新築・中古住宅共通の基準」もしくは「中古タイプ基準」で選択できるという点が挙げられます。
フラット35 Aプラン
省エネルギー性 | (1)一次エネルギー消費量等級5以上の住宅 (認定低炭素住宅及び性能向上計画認定住宅を含む) |
耐震性 | (2)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)3の住宅 |
バリアフリー性 | (3)高齢者等配慮対策等級4以上の住宅 (共同建て住宅の専用部分は等級3でも可) |
耐久性・可変性 | (4)長期優良住宅 |
フラット35 Bプラン
新築・中古住宅共通の基準
省エネルギー性 | (1)断熱等性能等級4以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級4以上の建築物 (2)エネルギー消費性能基準を満たす住宅 |
耐震性 | (3)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上の住宅 (4)免震建築物 |
バリアフリー性 | (5)高齢者等配慮対策等級3以上の住宅 |
耐久性・可変性 | (6)劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅(共同建て住宅などについては、一定の更新対策が必要) |
中古タイプ基準
省エネルギー性 | (1)二重サッシまたは複層ガラスを使用した住宅 |
耐震性 | (2)建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅(省エネルギー対策等級2以上または断熱等性能等級2以上) または中古マンションらくらくフラット35のうちフラット35S(省エネルギー性[外壁等断熱]に適合するもの)として登録された住宅 |
バリアフリー性 | (3)浴室および階段に手すりを設置した住宅 |
耐久性・可変性 | (4)屋内の段差を解消した住宅 |
3. 2022年4月以降、より質の高い住宅性能を持つ物件を優遇する制度内容に変更
2022年度の税制改正における住宅ローン減税の変更点として、省エネ性能の新区分が創設されました。国や自治体は、脱炭素社会の実現に向け、省エネ性能の高い住宅の推進に向け大きく舵を切っています。
※ 省エネ性能の新区分については、「住宅ローン減税、改正で省エネ住宅性能に新区分!中古住宅の適用は?」をご覧ください。
フラット35でも2022年4月以降、より質の高い住宅取得をサポートするため制度変更がなされています。
3-1. 長く安心して暮らせる住宅取得のため、フラット35「維持保全型」を新設
フラット35維持保全型は、住宅の維持保全に配慮した住宅に対して、当初の5年間の金利を0.25%引き下げるというもの。フラット35Sとの併用も可能です。
対象となるのは、「国の『長期優良住宅』に認定された住宅」、「予備認定マンション(新築マンション)」、「管理計画認定マンション(中古マンション)」、「安心R住宅(中古住宅)」、「インスペクション実施住宅(中古住宅)」、「既存住宅売買瑕疵保険付住宅(中古住宅)」のいずれかの要件を満たした住宅です。
住宅性能に加え、長く住み続けることができる住宅取得を促すための施策と言えますね。
新築だけでなく中古住宅を対象とする要件が多くあるのもポイントです。
なお、維持保全型には予算金額があり、予算金額に達する見込みになった際は受付終了となるため注意が必要です。利用を検討される際は事前に確認しましょう。
参考: 【フラット35】維持保全型
3-2. より高い省エネ性能を持つ住宅を優遇、フラット35S「ZEH」を新設予定
「フラット35S(ZEH)」が2022年10月借入申込受付分から始まることが発表されました。内容は、対象の住宅がZEH等の基準に適合した場合、フラット35の借入金利より当初5年間は年0.5%、10年目まで年0.25%引き下げるというもの。
ZEHとは、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、太陽光発電による電力創出システムの導入や、外皮の高断熱利用等による創エネルギーにより、家庭で使用するエネルギーの年間の消費量の収支をゼロとすることを目指す住宅のことを言います。
フラット35全体として、今後より一層省エネ性能の高い住宅の取得を促進する動きになっていると言えますね。
4. まとめ
今回は、フラット35とフラット35Sの概要について詳しく見てきました。より長く安心して暮らせる、そして環境へも配慮した住宅の普及に向けた内容へとサービスが変更されています。
立地や間取りといった条件以外に、住宅の質についても考えた住まい選びがより重要になっていくということですね。