マンションや家を購入する際に、多くの方が利用することになる住宅ローン。いざ支払いが始まってみると、様々な理由で住宅ローンが払えなくなる方が多くいらっしゃいます。昨今の新型コロナウィルス感染症による影響で収入が減り、返済に不安を感じている方も増えているのではないでしょうか。
この記事では、住宅ローンをこれから借りるという方も、現在利用しているという方も、必ず知っておきたい住宅ローンが払えなくなった時の対処方法について、詳しく解説していきます。
1. 住宅ローンが払えなくなる原因
住宅ローンが払えなくなる主な理由の一つが収入の減少です。会社の倒産やリストラ等の他、新型コロナウィルスの影響により仕事が減ってしまったという方も多いでしょう。その他にも、病気やケガによる休職や、自然災害の影響といった思いがけない出来事による収入減が理由となる場合もあります。
また、意外と多いのが無理な借り入れをしているケースです。昨今の低金利に加え、住宅ローン控除が利用できることを理由に、自身の年収や貯蓄に見合っていない住宅ローンを借り入れてしまうことが原因として挙げられます。
年間の返済率÷年収で計算する住宅ローンの返済比率は、一般的に適正は20~25%、年収倍率は5倍ですが、金融機関で設定している借り入れ上限の30~35%、年収倍率8倍といった上限いっぱいまで借り入れる方が実際には多くいらっしゃいます。
※ 併せて「住宅ローンの無理のない返済比率って?年収にあった目安や借入時の注意点」もご覧ください。
人生には思いがけないことが起こるということを予め見越したうえで、余裕を持って資金計画を行うことが必要です。
2. 住宅ローンが払えなくなったらどうなるのか
では、住宅ローンが支払えなくなったらどうなるのか詳しく見ていきましょう。
2-1. 滞納から競売実施までの流れ
住宅ローンの支払いを滞納したら催促状が届きます。その後も支払いが滞った場合、督促状が届き、三か月以上の滞納が続くと「期限の利益の喪失」が通知されます。
「期限の利益の喪失」とは、決められた金額を分割して返済を行う権利を失い、借入金の一括返済が求められるというものです。そして、金融機関によっては個人信用情報に金融事故情報として掲載されることになります。
期限の利益が喪失されると、保証会社が金融機関に一括返済(代位弁済)し、債権者が金融機関から保証会社に移ります。その後、競売の申し立てが行われ競売開始決定通知が裁判所から届き、現地調査などの準備が行われ競売が行われます。
ちなみに滞納から競売まではおおよそ半年程度です。また、売却後も残債がある場合は返済の必要があるため注意しましょう。
2-2. 任意売却について
競売までの間に、債権者(保証会社)の同意を得て売却を行い、一括返済をして競売を取り下げることも可能です。この方法を任意売却と言います。
任意売却は競売に比べて高く売却できる可能性があることや、引っ越し費用の負担や退去日についての相談等も可能であるというメリットがありますが、スケジュールもタイトになり、債権者の合意が得られない場合はそもそも行うことができないため注意が必要です。
参考: 任意売却とは?メリット・デメリットや任意売却の流れをわかりやすく解説
3. 住宅ローンが払えなくなった時の対処方法
先述したように、住宅ローンの滞納から競売まではかなりのスピードで進みます。そのため、住宅ローンが払えなくなった場合は、なるべく早く対処する必要があります。
競売に掛けられるといったことになる前に、住宅ローン支払いが厳しくなった場合の対処方法について詳しく見ていきましょう。
3-1. 金融機関に相談する
まず、住宅ローンの支払いが難しくなった際は早めに金融機関に相談しましょう。
返済期間を延ばして毎月の返済額を減らす、ボーナス払いの減額や中止、一定期間元本の返済の据え置きといった条件変更の相談ができます。また、金利が高い時期に住宅ローンを組んだ方であれば、借り換えを行うことによって返済負担の軽減につながる可能性があります。
新型コロナウィルス感染拡大を踏まえた対策として、国から貸付条件の変更などの要請もあり、相談もしやすい状況にあるため、支払いが難しくなった際は金融機関へ相談してみることをおすすめします。
3-2. 保険適用の確認
病気療養による収入減といった場合は、保険の適用される可能性があります。住宅ローンを組む際、多くの金融機関では「団体信用生命保険」への加入を義務付けています。
「団体信用生命保険」とは、名義人が死亡、高度障害状態になった場合に保険金でローン残債が支払われるというものですが、保険のプランや条件によっては特定の疾病で保険が下りる場合があります。加入した団体信用生命保険の適用条件を確認してみましょう。
3-3. 個人再生を利用
住宅ローン以外に借入がある場合、個人再生を利用するという方法もあります。個人再生とは、自動車ローンやカードローンなどの債務を圧縮する債務整理手法です。中でも、住宅ローンを支払っている方の個人再生の場合は、住宅資金特別条項を利用し、裁判所に住宅ローン以外の債務の減額を認可してもらうことができます。
ただし、個人信用情報に事故情報として記録されること、住宅ローン自体が減額されるわけではない点は注意しましょう。
3-4. 売却する
住宅ローンが払えなくなった場合、家の売却も選択肢の一つになります。売却には一定の期間も必要になるため、検討する場合は家計が厳しくなったタイミングで早めに不動産会社に相談することが重要です。通常の売却であれば、競売のように市場価格を下回る価格で手放すことにはなりませんし、個人信用情報に事故情報が残ることにもなりません。
ただし、売却価格が住宅ローン残高を上回る状態でなければ、残債が残ってしまうため注意が必要です。
3-5. リースバック
家を手放したくないといった場合には、売却の手法として「リースバック」という方法もあります。これは、不動産会社に家を売却した後、そのまま賃貸契約をして家に住み続けることができるという仕組みです。
売却した資金で住宅ローンを返済し、その後も家賃を支払うことで引っ越しをしなくても済むといった点では便利な仕組みです。自分の所有ではなくなりますが、売却を検討される場合には選択肢の一つになります。
※ 参考記事: 「任意売却とリースバックの違いとは?併用時のメリット・デメリットを解説!」
4. まとめ
今回は、住宅ローンが支払えなくなった場合の対処方法について詳しく見てきました。
思いがけない出来事で住宅ローンの支払いができなくなるということは、誰の身にも起こる可能性があります。支払が難しくなった際には早めの対処を行うことが重要です。