マンション標準管理規約とは?概要、制定から改正までの経緯とポイント

不動産知識
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マンションは、多くの人が同じ建物に暮らす集合住宅です。そのため、みんなにとって快適な住環境を維持するためには守るべきルールが必要となります。それが管理規約です。

管理規約は、それぞれのマンションで自由に内容を定めて作成するものではなく、国土交通省が作成する一定のガイドラインに沿って制定される必要があります。

今回は、このマンション管理規約の基となるマンション標準管理規約について詳しく解説していきます。

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1. マンション標準管理規約とは

まず、マンション標準管理規約とは何かについて詳しく見ていきましょう。

1-1. マンション標準管理規約の概要

冒頭でもお伝えしたように、マンションを適切に維持管理するための基本的なルールを定めたものが管理規約です。管理規約の内容は「区分所有法」の定めに従う必要があるため、マンションごとに勝手に内容を定められるものではありません。

そうした理由から、マンションの管理規約を決める際の標準的なモデルとして国土交通省が作成したものが「マンション標準管理規約」です。
このマンション標準管理規約を基に、それぞれのマンションの状況にあわせて内容を調整し管理規約が作成されます。

ただし、標準管理規約への変更は強制ではなく、あくまでも管理規約作成時の参考として使用されることを目的につくられたものであるという点は覚えておきましょう。

1-2. 主な内容

マンション標準管理規約の主な内容は、共用部分の範囲に関するもの、管理組合や理事会・会計等の運営に関するもの、区分所有者の共用持分の割合、専用使用権の範囲、使用細則の設定等になります。また、災害の際の対処方法や避難措置についても定められています。

1-3. 標準管理規約の種類

マンション標準管理規約には、マンションのタイプによって以下のように大きく3つの種類があります。

1-3-1. 単棟型

単棟型は、一つの敷地にマンションが一棟建てられている、住居専用のマンションタイプを想定して作成されたもの。最も一般的なマンションに当てはまるもので、管理規約の基本となるものです。

標準管理規約(単棟型)及び同コメント|国土交通省

1-3-2. 団地型

複数の建物で敷地を共有している団地のようなマンションタイプを想定して作成されたもの。複数の建物の管理を一元的に行う必要があるため、そうした状況に即した規定が設けられています。

標準管理規約(団地型)及び同コメント|国土交通省

1-3-3. 複合型

住居だけでなく、一部が店舗や事務所として使用されるマンションタイプを想定して作成されたもの。建物の一階部分を店舗が占めているマンションなどがイメージされますね。

管理組合には住居部分の区分所有者で構成する「住居部会」と店舗部分の区分所有者で構成する「店舗部会」が置かれますが、全体の意思決定は管理組合が一元的に行います。

標準管理規約(複合用途型)及び同コメント|国土交通省

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2. 2004年マンション標準管理規約の改正までの経緯と背景

マンション標準管理規約は、2004年1月に行われた大きな改正の際に、旧名称「中高層共同住宅標準管理規約」から新たに変更された名称です。

中高層共同住宅標準管理規約の制定から大きな改正に至った経緯について詳しく見ていきましょう。

2-1. 中高層共同住宅標準管理規約の制定

分譲マンションの建築が増え、様々なトラブルが多く発生するようになったことから、1983年に「区分所有法」が大幅に改正されることになりました。

主には、区分所有者が管理組合を構成すること、専有部と敷地利用権との分離処分の禁止、建替え決議制度の導入、集会主義の徹底などが定められ、この改正された区分所有法の内容に対応するために「中高層共同住宅標準管理規約」が制定されることとなり、広く周知・普及が図られました。

2-2. 1997年に実施された中高層共同住宅標準管理規約の大改正

1983年の制定後、さらにマンションの普及が急激に進んだことや建物の経年による様々な問題が多発。そうした状況から中高層共同住宅標準管理規約は、1997年に大きな改正が行われることになりました。

主な改正内容としては、適切な大規模修繕を行うために長期修繕計画の作成と管理を管理組合の業務として明確に位置付けたこと、駐車場の使用の明確化、専有部分のリフォーム工事の手続き整備、マンションのタイプにあわせて団地型と複合型の標準管理規約を設けたこと、駐車場の使用に関するトラブルを避けるための規定の整備等があり、現在の管理規約の大本となる内容に改正されました。

2-3. 2004年マンション標準管理規約へと名称変更

2004年には、さらなる改正が行われました。その背景には、2001年の「マンション管理適正化法」の施行、2002年の「マンション建替え円滑化法」の施行があり、これらの法制度の変化に対応するために大幅な改正が行われることになりました。

そして、この改正のタイミングで中高層共同住宅標準管理規約からマンション標準管理規約へと名称が変更されます。

主な改正のポイントは、専門的知識者の活用(相談や助言等)に関する規定の新設、建替えに関する規定の整備、決議要件・電子化に関する規定の整備、新しい管理組合の業務の追加等があります。

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3. 近年のマンション標準管理規約の見直し

2004年以降も、時代の変化や世間の状況に合わせて管理規約の見直しが行われてきました。

2016年の改正では、理事長を含む理事及び監事への外部専門家の活用や、暴力団の排除規定や災害時の緊急避難措置の規定の追加、コミュニティ条項を再整理し、防災・防犯、美化・清掃などのコミュニティ活動が可能であることを明確にすることが定められました。

直近の令和3年に行われた改正では、ITを活用した総会・理事会の実施が可能なことを明確化、マンション内における感染症の拡大への対応等も定められています。

今後も、世の中の変化により必要な改正が行われていくことになるでしょう。

参考: 国土交通省 マンション管理について

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4. まとめ

今回は、マンション管理規約のベースとなるマンション標準管理規約について詳しく解説してきました。

マンションの住民みんなが快適な生活を送ることができ、そして長期的な資産維持の管理のために必要な管理規約。時代の変化やマンションの状況にあわせて、マンション管理が適切に行われるように改正が重ねられてきたのがお分かりいただけたと思います。

マンション管理には管理規約が欠かせません。非常に重要な内容ですから、マンション購入の検討の際には、きちんと事前に確認しましょう。