マンションの減価償却について、仕組みや耐用年数、計算方法を解説

中古マンション
この記事は約5分で読めます。

経理上の知識として重要なものの一つに「減価償却」があります。
マンションも減価償却の対象となり、上手に使うことで節税効果も得られるもの。

ただし、マンションの減価償却には様々なルールがあるため、正しく理解する必要があります。
この記事では、減価償却の概要・仕組みから計算方法まで、マンションの減価償却について必要な知識について解説します。

スポンサーリンク

1. 減価償却とは?

減価償却とは、資産が時間の経過につれて価値が減っていくという考え方。減価償却によって計上する費用を減価償却費と言います。

固定資産の取得にかかった費用を、購入した年に全額計上するのではなく、耐用年数に応じて配分し費用計上するというものです。

固定資産は1年以上保有する資産を指し、不動産も対象となりますが土地は対象とはなりません。
実際の土地価格は市況によって下落することもありますが、会計上は経年によって価値が落ちることがないと考えるためです。

マンションの減価償却を行う場合は、土地と建物に分け、建物価格に対して減価償却を行うことになるため注意しましょう。
また、建物と同様に、住宅設備も経年により価値が下がるため減価償却は可能です。

スポンサーリンク

2. どんな時に必要なのか?

減価償却は、費用を計上するタイミング、すなわち税金の申告の際に必要となります。
取得したマンションを賃貸に出して家賃収入を得ている、または、マンションを売却した際の売却益(譲渡所得)が課税対象となるという場合は、減価償却費を計上できるため、建物の減価償却を計算する必要があります。

スポンサーリンク

3. マンションの耐用年数について

減価償却は、耐用年数で費用を配分して計上するとご説明しましたが、この耐用年数は税法上で定められています。
詳しく見ていきましょう。

構造や用途、建物か設備かによっても異なる

建物の耐用年数は、構造、住宅・事務所・店舗といった利用用途によっても異なります。

例えば、住宅用の建物に絞ってみてみると、木造モルタル造であれば20年、木造・合成樹脂造は22年、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリート造は47年と、より耐久性の高い素材が長いのが分かると思います。マンションは鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリート造ですから、比較すると耐用年数は長いですね。

ちなみに、税法上で定められたこれらの耐用年数を「法定耐用年数」と言います。
法定耐用年数は、実際の建物寿命を指すものではなく、あくまでも税務上の概念となります。

新築か中古かによっても異なる

先ほどご紹介した年数は新築の場合の法定耐用年数となり、中古マンションを取得した場合は、築年数を法定耐用年数から引く必要があります。また、築年数が法定耐用年数を超過しているかどうかによっても計算式が異なるため注意しましょう。

法定耐用年数の一部を経過した場合

耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+築年数×20%

法定耐用年数をすべて経過した場合

耐用年数=法定耐用年数×20%

参考: 中古資産の耐用年数|国税庁

スポンサーリンク

4. 減価償却費の計算方法

マンションの減価償却には「定額法」と「定率法」の二つの方法があり、取得日によって適用される方法が異なります。

定額法は、一定額を毎年計上していく方法で、減価償却の額は毎年同じ額になります。
一方、定率法は物件取得額から前年の減価償却費の総額を引いた額に、法律で定められた償却率を掛け合わせて算出する方法で、取得した年から年々減少していくものです。

平成28年3月以前に取得したマンションの場合、建物は定額法、設備は定額法・定率法のどちらでも可(ただし、定率法を使用する場合は届け出が必要)。

そして、平成28年4月以降に取得した場合は、建物・設備ともに定額法が適用されます。

特別に届出を行わない限り、基本的には定額法の適用になるため、こちらの計算方法を覚えておきましょう。

定額法の減価償却費 計算式

定額法の計算式は下記になります。

「減価償却費=建物の取得費×定額法の償却率」

先述したように、不動産の減価償却の対象となるのは建物部分となり土地は含みませんが、建物を取得した際にかかった仲介手数料と固定資産税・都市計画税の精算分も含めた金額になります。

償却率とは、1年でどれだけ資産価値が減少したかを表す数値で、建物の耐用年数によって税法上で決められています。こちらは、国税庁のウェブサイトで確認ができます。

参考1: 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁
参考2: 減価償却資産の償却率表

5. マンションの建物部分の価格がわからない場合は

中古マンションの場合、建物と土地の割合がはっきりと契約書に明記されていないことがあります。
建物部分の価格がわからない際には、下記の方法で建物部分の価格を算出しましょう。

消費税から算出する方法

売買契約書に記載されている消費税から、建物価格を算出することができます。消費税は建物価格のみに係るため、消費税額÷税率で算出できます。

固定資産税評価額から算出する方法

固定資産税評価額を調べれば建物と土地の割合がわかるため、建物価格を算出できます。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる納税書についている課税明細書で確認しましょう。

もし課税明細書がない場合は、市区町村の役所窓口で固定資産評価証明書を取得して確認できます。

6. 設備の減価償却について

ここまで、建物の減価償却について詳しく見てきましたが、先述したように建物内の設備も減価償却の対象となり、建物と同じ方法で算出できます。

注意すべき点は、建物と設備は法定耐用年数が異なるということ。
給排水・ガス・電気設備(一部を除く)の耐用年数は15年と定められています。

マンションの減価償却を行う際は、土地、建物、設備と分けたうえで、計算していくとスムーズですね。

7. まとめ

今回は、マンションの減価償却について、基本的な概要から減価償却費の算出方法等を解説してきました。
減価償却は、経費を長期間にわたって計上でき、適切に利用することで節税につなげることができる仕組みです。

なんとなく難しいなと感じていた方も、この記事の内容を参考にしていただき、正しく仕組みを理解して活用していただければと思います。