価格がリーズナブルで好立地、そして自分好みにリノベーションができるということで、人気の中古マンション。
でも、実際に何年住めるのか、と耐久性や寿命について不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、マンションの寿命についての考え方、長く使っていくために必要なことや物件を見極めるポイントについて解説します。
1. マンション寿命の考え方
これまで日本の住宅の平均寿命は30年程度と言われることが多くありました。国交省のデータでも滅失住宅の平均築後経過年数は約30年という数値が出されており、欧米諸国と比較しても大きく低い年数です。
しかし、この数値は実際に解体された木造住宅によるデータとなり、そのままマンションの寿命として考えることはできません。
また、日本の分譲マンションが普及し始めてから約50年。そのため、マンションの寿命については明確な答えはないというのが実情です。
では、色々な観点でマンション寿命について見ていきましょう。
2. 法定耐用年数とは
マンションの寿命を考えるときの一つの指標として、「法定耐用年数」があります。これは、建物の減価償却を算出するために、税法上で決められたものです。
建物の構造や用途等によって異なりますが、鉄筋コンクリート造のマンションの場合、法定耐用年数は47年となっています。
この法定耐用年数は、固定資産としての物件の価値や寿命を見る上では参考になりますが、あくまでも税法上で減価償却の計算に用いる基準値として画一的に決められたものであり、法定年数=マンションの寿命ではないことは理解しておきましょう。
3. 建て替え状況からみた寿命
では、実際に建て替えられたマンションの状況を見てみましょう。
国交省のマンション建て替え実施状況によると、令和3年4月時点で建て替え工事が完了したマンションは263件。
建て替えられた物件の平均築年数は、全国平均で約33.3年、東京都では約40年ということで、概ね30~40年で建て替えられていることがわかります。
ただし、この数値は日本の分譲マンション約675万戸の中の、すでに建て替えが実施されたわずかな物件の平均築年数であり、当然40年以上たっても長く使われている多くのマンションは入っていません。
また、建て替え理由の例としては、配管等の設備に問題が生じたが構造上の理由で更新できず建て替えを行ったというもの、区画整理や再開発等の外部要因というものなど物件により異なるため、すべて一概に建物の老朽化が原因とは言えません。
※ 参考記事: 「マンションは何年で建て替えが必要?建て替えの現状や建物寿命の考え方」
参考: マンション建替え寿命|東京カンテイ
4. 鉄筋コンクリート造の平均寿命
国交省が発表している、『「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書』には、鉄筋コンクリート造のマンションの平均寿命は68年という調査結果が発表されています。
また、同報告書には、鉄筋コンクリート造の物理的寿命は117年と推定されるとの調査研究例も掲載されており、実際の建物の耐久性という観点からいえば、鉄筋コンクリート造はかなり寿命が長いということがわかります。
実際に、1911年築のKN日本大通ビルは、110年以上経った今でも使われているという例もあります。
こちらの事例はオフィスビルでマンションではありませんが、マンションの寿命を考える上でも参考になりますね。
参考1: 「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書|国土交通省
参考2: KN日本大通ビル|三井物産フォーサイト
5. 建物の耐震性からみた寿命
もう一つ、マンション寿命を考える上で重要な要素が耐震性です。
マンション購入を検討される方であれば、旧耐震基準と新耐震基準というものがあるのはご存じだと思います。
旧耐震基準は、震度5強程度の地震でも倒壊しないという基準。新耐震基準は、さらに耐震性能を厳しく設定し、震度6強から7程度の地震でも倒壊しないという基準となっています。
新耐震基準は1981年6月から施行されたため、それ以前に建築された物件は旧耐震基準ということになります。
耐震基準だけで判断すると旧耐震のマンションは建て替えすべきなの?と考えられることになりますが、必ずしも旧耐震の物件に十分な耐震性能がないということではありません。
実際、東日本大震災の被害データをみてもわかるように、被害を受けたマンションに新旧の耐震基準による差はほとんどありませんでした。また、耐震性能に問題がある場合も、耐震改修を行うこともできます。
耐震基準はマンション寿命を考える一つの要素ではありますが、すべての物件に当てはまるものではありません。
※ 耐震基準については、「旧耐震基準とは?新耐震基準との違いから、確認方法、選ぶ際の注意点」で詳しく解説しています。
参考: 「東日本大震災 宮城県マンション被害状況報告」|東京カンテイ
6. 寿命の長いマンションを見極めるポイント
ここまで、様々な観点からマンション寿命について見てきました。
様々な要素がありますが、実際にマンション選びをする際にどんなマンションを選べばよいのか。
見極める際のポイントについて、詳しく見ていきましょう。
※ マンションの耐用年数にも関係する減価償却については「マンションの減価償却について、仕組みや耐用年数、計算方法を解説」をご覧ください。
6-1. 管理状態、長期修繕計画、大規模修繕実施状況を確認
マンションを選ぶ上で、最も重要な要素が管理体制です。
建物の耐久性は構造自体によっても異なりますが、どのように使っていくかということも、寿命に影響を与える大きな要素です。
マンションの管理に必要なのは、日々の清掃やメンテナンスに加えて、長期的に必要となる建物の修繕計画がきちんと立てられ、且つそれらがちゃんと実施されていること。
配管や外壁・屋根等を定期的に修繕していくことで、建物の老朽化を防ぐことができるのです。
また、そのマンションに住む住民の意識も実は重要なポイントになります。
管理費や修繕積立費がちゃんと貯まっているか、共用部分の利用マナーができているかも、購入を検討する際には内覧等で確認しておきたいですね。
6-2. 構造や建材の確認
マンションの建て替えの部分でも触れましたが、構造的に配管の交換が難しい等の理由で、物理的に長く使うことのできない構造の物件もあります。
また、コンクリートや配管等の素材もマンションの寿命に影響します。建築時期によっても建材の質や構造が異なり、中には長く使うことができないものがあることを知っておきましょう。
これらを確認する方法として住宅性能評価がありますが、まだ導入されてから短く、すべての物件には当てはまりません。
築年の古いマンション購入を検討している、構造に不安に感じるといった方は、インスペクションの専門家などのプロに依頼することをお勧めします。
※ インスペクションについては、「建物状況調査とは?基本的な知識から調査項目、メリットや注意点まで解説」で詳しく解説しています。
7. まとめ
今回は、マンションの寿命はどのくらいなのかについて、様々な視点からみてきました。
マンション寿命の年数については、建物ごとにも異なるため一概には言えませんが、構造だけではなく建物を維持管理することが、寿命に大きな影響を与えるということは理解しておく必要があります。
これから物件選びをする際には、ぜひ管理状態の確認をしっかりと行いましょう。